エンジンのオイル消費の問題に対し、ピストンの持つ機能、ここではオイル保持の最適化により、結果としてオイル消費を大きく減らす設計案を提示した。制御因子として、設計寸法ではなく、面積や体積といった物理現象にとって意味のある特性を採用することにより、交互作用をなくすとともに、改善の方向性を明確にした。品質工学を活用する際、不具合事象に着目するのではなく、本来システムが持っている機能に着目し、その機能が外乱によらず、安定して働くように構造の最適化を行うが、本論ではオイル消費を減ずるピストン背面のオイル通路の機能と構造に着目した。供給されたオイルは、負圧発生時に、通路を通って、燃焼室に吸い上げられ、そこで蒸発することにより消費することから、その通路中でオイルを保持する機能を最適化すれば、消費を減らす事が可能である。ここで、電気回路の類推で、燃焼室とクランクケースの圧力差を電圧、オイル流を電流、オイル通路中の容積部をコンデンサ、そして狭い通路を抵抗と見立て、電流を小さくするコンデンサ、すなわち容積と、抵抗とした通路の面積を制御因子とした最適化を行った。 オイル消費量は車の運転条件によって影響が大きい、燃焼室とクランクケースの圧力差に対し、変化の少ない平坦な特性とすることにより、外乱に対し、ロバストにするため、標準SN比の特性を用いた。また、オイルの供給量やシリンダボア変形量はオイル消費に対する影響が大きいが、標示因子として最適化対象は、ピストンに絞った。