筆者は自動車用エンジンの設計においてシミュレーションを活用し、試作・評価試験の前に機能評価を行い、エンジン部品のパラメータ最適化を行っていた。しかし、シミュレーションを活用して市場の様々な使用条件や環境で機能のロバストネスをどう設計するかは全くアイデアがなく、実験ベンチでの「いじわる試験」や、様々な使用条件、環境でのモニター評価試験に頼るしかなかった。しかし、試験だけによる機能のロバスト性の評価は、市場環境や製品の使用条件が膨大で、漏れのない評価は不可能と考える。
このような状況の中、筆者は品質工学と出会い、ロバスト設計の考え方に大きな可能性を感じ、シミュレーションによるロバスト設計への挑戦を始めた。
参考にしたのが、田口玄一著の研究開発の戦略1)である。そこで、直面した新たな課題が、シミュレーションの品質、精度をどう保証するかである。品質工学の中ではシミュレーションの精度及び検証方法について言及している事例がなく、米国機械学会で定義されたV&V: (Verification & Validation)2) の方法論を参考に、ロバスト設計で用いるシミュレーションの精度や検証方法について筆者の考え方を述べる
参考文献
1) 田口玄一:研究開発の戦略、日本規格協会 (2005),pp. 76-81
2) ASME: Guide for Verification and Validation inComputational Solid Mechanics, American Societyof Mechanical Engineers, 2006, ASME V&V 10-2006(2006)